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おっぱい

ペンギン・ハイウェイ

 

の映画をようやく観てきたので、感想を書きます!

ネタバレ含みますので注意です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前触れたとおり、原作も読んでいたので映画化が決まった時点からずっと楽しみにしていた作品だったんですが……結論、すっごく良かったです!

正直結末を知っているので、なんというかもう冒頭のOPみたいな部分だけでもかなりグッとくるものがあって、日常にペンギンが溶け込んでいるっていうあの不思議な情景を見事に映像化してくれているなあと思いました。

 

僕が映像化を楽しみにしていたのは、

 

・お姉さんが投げるコーラの缶がペンギンに変わるところ

・<海>の姿

・<海>の中の世界

 

この辺りだったんですけど、バッチリ全部おさえてきてくれて感動致しましたわ。

特に<海>の中の世界については、終盤で尺もあんまり残っていないだろうなあってところで

あれだけひと目で分かるほどに退廃的で、不気味な映像を作ってくれたことに感動しました。

 

原作だと、<海>の中に入ってからが結構長かった記憶があるんですけど

それをうまく纏めてくれていたと思います。

 

逆にあの不思議な世界を文章でしっかり掘り下げられているので、原作をこれから読むって方にはそこが見どころになるんじゃないかと。

 

 

それからキャラクターの描写について。

アオヤマ君のキャラデザは結構慎重に決まったって話だったそうなんですが

違和感なくすっぱりハマっていたと思います。

 

彼は賢いのに、年齢相応に子供っぽい考え方がちゃんとあって見栄っ張りなところがとてもかわいくて、原作以来のそのキャラクターに懐かしさを覚えておりました。

 

あとお姉さんのおっぱいがすっごく丁寧に描かれていて最高だった。

もちろん、アオヤマ君がおっぱい大好きなのでそんな彼の目に映るおっぱいは至高のそれでなくてはならんと思うたのだが

若干しつこいくらいのアオヤマ君のおっぱい連呼に見合った素晴らしいおっぱいだと思いました。

 

因みに原作ではあそこまでのっけからおっぱいのことを考えていた訳ではないと思うんだけど

映画の尺を考えたときに、序中盤のつかみとしてそれは凄く効果的な演出なのかなと思いました。

実際ペンギン・ハイウェイは主人公であるアオヤマ君のモノローグや考察がほとんどで話が進んでいくので、初見の方に映像を通してすんなり入り込んでもらう、キャラクターを把握してもらうって考えた時にはまとまりが良いのかなって

そういう観点からも今回は何気なく観てみたりもしたのでした

 

あと、原作でも可愛いな~~って思ってたハマモトさんがばちこり可愛くて最高でしたね。

彼女のキャラクターは本当に純ヒロイン像って感じがして、異質なお姉さんとの対比が映える。

 

僕は彼女が、<海>の研究を先に進めたいって思う一方でお姉さんのことがあまり好きじゃなかったから(それもアオヤマ君のせいで)、大人を入れたくないっていう若干遠回しな言い方でアオヤマ君に抗議するシーンがすごい好きなの

彼女が、お父さんの言うように研究者としてのプライドを持っている一方で……個人的な感情を捨てきれない子供としての一面もちゃんと持っているのがよく分かるからですね。

 

そういえば映画ではハマモトさんは大分すんなりとアオヤマ君達を<海>の研究に引き込んでいましたが、

彼女は<海>を自分が見つけたものだ!って強く主張しているんですね本当は

その辺の意地っ張りで研究者然としている部分は原作で補完されているので読んで欲しいところです。

 

 

最後は心に残ったシーンを抜粋して書きたいと思います。

 

アオヤマ君は、お姉さんの家に行った時お姉さんの寝顔を見てふと考えを巡らせます。

そしてそのことを、海辺のカフェでのお別れの際に思い出すわけなんですが。

 

"ぼくはかつてお姉さんの寝顔を見つめながら、なぜお姉さんの顔はこういうふうにできあがったのだろうと考えたことがあった。それならば、なぜぼくはここにいるのだろう。どうしてここにいるぼくだけが、ここにいるお姉さんだけを特別な人に思うのだろう。"

 

映画ではもう少し短い台詞に纏められていましたが、アオヤマ君はこういう独白をします(因みにこの後森見作品の主役らしいもっと長い台詞が続きます)

僕はペンギン・ハイウェイという作品を象徴するメッセージがここに込められている気がして、映画のこのシーンで何度も読んだこの台詞を思い出してひどく胸を打たれたのです。

 

努力家で勉強家で、世界の果てまでをも知りたいって思うほど好奇心旺盛なアオヤマ君が、うまくノートをとれないくらいに不可解なお姉さんのこと。

謎を解明したその先で、達成感とは異なって訪れてしまった理不尽さに押し潰されそうになるアオヤマ君。

この場面に込められた切なさが、この作品の全てだと思っています。

 

だからまあ、多分、冒頭の時点で既に泣きそうになっていたんだと思う。

ペンギン・ハイウェイってこういう話だかんなって最初から分かっていると開始数分でなんかもう泣きそうになるんですわ。

 

そしてラストは、しっかりと原作の台詞を引用してシメてくれていてとても良い幕引きでした。

ペンギン号が見つかるオリジナルカットも、良い演出だと思いました。

 

 

ネットでは詰め込みすぎって意見をよく見ていたんですが、

上手いこと飛ばせるところは飛ばして映像と音楽だけにまとめるっていう形でバランスの取れた編集だったんじゃないかなーと思いました。

先述の通り、おさえるところはしっかりおさえられててって感じで。

 

ひとつだけ、僕が大好きなんだけども残念ながら本編でカットされてしまっていたシーンを紹介。

 

お姉さんが消えてしまったあとで、お父さんが帰国してアオヤマ君と二人でコーヒーを飲むシーンがあるんですね

そこでのお父さんとアオヤマ君の会話。その最後の台詞。

 

"「父さん、ぼくはお姉さんがたいへん好きだったんだね」とぼくは言った。"

"「知っていたとも」と父は言った。"

 

ここに至るまでの会話が、これまた作品を象徴するようなワンシーンなので気になる人は是非原作を読んでね

僕はこの最後のやり取りが凄く好きなんですね……お父さんとの絡みはもっとあっても良かったかなって思ったけれど、ここを除くとそれなりにしっかり描かれていたとは思います。

 

この作品はアオヤマ君という小学生の視点で描かれているっていうのがすごい大事で

実際、作品の中で起きた出来事は大人も驚きの不思議な出来事ではありました。それでも、たとえ<海>に出会わなかったとしてもアオヤマ君にとっては日々が冒険と発見の連続だったことは間違いないわけなんです

何故なら、彼は世界の果てを探していて、それが自分の住んでいる町にあるかもしれないって思っている。

大人になってしまったら小さく思えてしまうかもしれない世界の中で、子供の彼は知らないことを知っていく感動に毎日胸を弾ませているってこと。

 

子供の時に感じていた、いつもと違うあの道を曲がったら……そこに見たこともない不思議な景色が、世界の果てがあるかもしれない。

 

そういう感覚がこの作品の元になったって森見さんがインタビューで仰られていた(はず)なのですが、

今回の映画を通してそれが改めて実感出来たように思うのでした。

 

夏は童心に帰るのにふさわしい季節。

 

kyc